知る   中之条町について,いろいろと知ってみよう
中之条町の下水道について
安全衛生管理

業務の安全衛生管理のためにいろいろな指針が出されているが,見学者にも注意を払っていただかなければならないことがたくさんあります。一度目を通しておくと,怪我をしたり病気になったりすることが防げますので,よーく読んでください。

(社)日本農業集落排水協会のマニュアルより抜粋。
【安全管理】
1.ガス中毒

硫化水素発生箇所と点検。(前処理,汚泥貯留,マンホール)
2.酸素欠乏
密閉箇所と点検。(密閉室,槽,マンホール)
3.転落
箇所と点検。(槽,悪天候の屋外作業)
4.感電
箇所と点検。(ゴム手袋靴,漏電)
5.薬剤の取り扱い
箇所と点検。(塩素消毒)
6.機器
箇所と点検。(スクリーン,ブロア,ポンプ,チェーン)
7.腐食,破損
箇所と点検。(防護柵,蓋,フック,鎖,階段)

【衛生管理】
1.感染
汚水中の大腸菌群そのたの雑菌(服,靴,手袋,手洗い)
2.悪臭
ばっ気,ポンプ運転,スクリーンし渣,スカム)



もうすこし,細かく記載します。(作者の独断による解説)


硫化水素は,長い圧送管(周りより低い箇所からポンプで本管まで汚水を送る管)の出口のマンホールとそれに続くいくつかのマンホールに多く発生します。
また,前処理室や汚泥貯留槽にも発生します。
いきなり入らず,蓋や扉を開けてしばらくして,ガス検知器(酸素濃度や硫化水素濃度を表示)を先に入れて,ブザーが鳴ったり,危険な範囲の数値(10ppm以上)の場合は入れません。ガスが下(空気より重い)にたまっていることがありますので,機械を信じてはいけません。機械は壊れたりすることもあるのです。また,薄い濃度でも,鼻がなれて長時間すってしまうと気持ちが悪くなって,倒れます。そして,濃いのを吸ったりそのままになって命がなくなることもあります。
特徴のある臭いですので,分かります。でも,濃いのを吸い込むと死にます。卵の腐った臭いと表現され,火山地帯の割れ目から吹き出していたり,温泉(万座,草津温泉など)の中にも臭うものがあります。

酸素が少ないところは,密閉された室・槽です。また,それらの室には,有害なガスも発生している可能性が大きいです。また,マンホールも危ないです。蓋や扉を開けて,酸素濃度を機械で測ってから入りましょう。その昔は,炭鉱労働者などが,危険を感知するためにランプや鳥を連れていったという話もあります。
酸素は,大気中(空気)のなかに21%ほど存在しています。18%より少なくなるところへは,入れません。見えないだけに注意しすぎることもありません。

転落は,十分注意しましょう。見学に,革靴では,ちょっと危ないです。運動靴を履きましょう。階段やタラップでスリップすることはご存じでしょう。また,階段やタラップがもし,腐って壊れて脱落することもあります。(硫化水素臭がかすかに感じられたりしたら,腐食があると思っていいでしょう。また,濡れていたらやはり腐食が・・・)一歩一歩注意して見学しましょう。注意深い人は,ヘルメットと手袋はあった方がいいですね。

感電は,どこの家庭でも注意していることですが,より注意してあちこちに触りましょう。下水道の施設は家庭より高電圧(200V)の機器を多く使っています。中には,とても高電圧(6600Vや,数万ボルトの場合)もあります。金属類には,注意して触れましょう。また,オゾンを使用している施設では,高電圧が使われています。
ドアノブに触れるときは,いきなり握りしめないで,手の甲でちょっと触れてビリィ・ピカッとこなければ,手をひっくり返して手のひらで,おもむろにドアを開けるとか・・・。用心深い人は,ゴム手袋とゴム長を履いてくるとか・・・ちょっと大げさかな? それほどのところには,普通は案内されませんね。発電所・変電所等では,危ないところもあるが・・・。それと,巨大モータ等によるポンプの運転が行われているところでは,時計が壊れたり,ペースメーカーが壊れたりということもあるかもしれませんので注意してください。
    電圧による影響
    10V 全身水中にあるときは電位傾度10V/mが限界。
    20V 濡れた手で安全な限界。
    30V 乾いた手で安全な限界。
    50V 生命に危険のない限界。
    100〜200V 危険度が急に増大。
    200V以上 生命に危険。
    3000V 荷電部に引きつけられる。
    10KV以上 跳ね飛ばされて助かることがある。

薬剤で危険なのは,塩素化合物等です。小規模のところは,固形塩素(水泳プールに投げ込んでいるあの丸い物,最近はあまり見かけないか・・・)を使っています。触ったり食べたりしないでください。固形塩素は,消毒槽(塩素混和池)の入り口に詰まっています。また,塩素ガスを使うところや液体の塩素化合物を使っているところがあります。いずれにしろ消毒薬ですので,大腸菌などを殺す力があるわけですから,人など簡単に痛めつけられます。(消毒には,UV(紫外線)やオゾンなどを使うところもありますが,もっと危険ですので注意が必要!)
一般的な施設では,塩素消毒(次亜塩素酸ソーダが多い)により放流していますが,どうしても有害な有機塩素化合物の生成があったり,残留遊離塩素が川や海の魚たちに毒性を示しています。しかし,安価で確実に消毒ができ,実績のある方法であることは事実です。最近の傾向としては,財政の豊かな処理場を持つ地域や,特に環境問題に対して注意を払わざるを得ないと思っている地域は,紫外線を使った消毒やオゾンを使った消毒が行われています。

紫外線に注意
紫外線は,風呂の循環装置,厨房・床屋の殺菌灯で使われていて日ごろよく(?)目にします。紫外線は,当たりすぎると目を悪くしたり皮膚炎・癌を招きます。紫外線は,消毒にとても有効で強力です。ですから,下水処理施設の消毒に紫外線を使っているところを見せてもらうときは注意しましょう。普通見せてくれません。危険だから。みても,青白い光を放つ蛍光灯みたいのが並んでいるだけです。オゾン層の破壊が紫外線を増やしています。

オゾン(O3)に注意
オゾンは,独特な臭いがします。オゾンは,地球の周りにたくさんあって,有害な紫外線を吸収しています。オゾンを作るのは,雷を人工的に起こせばいいのですが,高電圧が必要です。発生装置は直接手を入れられないようになっているので,危険は少ないですが,生成したオゾンを吸い込むと危険です。また,紫外線ランプの周りにもオゾンが微かにできます。オゾンは,強力な酸化作用がありますので,消毒に使われています。使用した残りのオゾンは分解処理をして大気中へ放出されますので直接に触れることはありません。しかし,直接触れたり吸い込んだりしないでください。オゾンを接触させているところは見せている施設があります。オゾン処理した水は,魚の住む川の再生のため川の流れを作る水として再利用されています。
また,オゾンを使って汚泥の減容処理をする施設(中之条町など)もありますが,まだ数が少なく施設を見る機会は少ないでしょう。
オゾンを使ったいろいろな器具が市販されていますが,使用には注意した方がいいでしょう。2ppm程度の濃度の基準が示されていますが・・・。

機械類は,車のエンジンルームと同じように手を入れたり,服を巻き込まれないようにするのが大切です。珍しい機械ですので,触りたくなる気持ちも分かりますが,危ないです。

感染
今,世の中で危険なのは,人間と感染症です。人間がボタンを押せば簡単に兵器が飛び交い,人間が簡単に毒物をばらまいています。
ちょっと前までは,癌や成人病が取り立たされていましたが,最近は,感染症に注目が移るのではないかと思います。MRSAや肝炎,インフルエンザ,エボラ熱などなど感染症による被害がすごく広まっています。汚水中には,大腸菌をはじめ雑多な菌がたくさんいます。触れるときには注意してください。健康な人であれば,感染の恐れが低いことも事実ですが,感染しないとは言い切れないです。特に,きれい好きで,抗菌加工した物の好きな方,皮膚の雑菌が減少していますので,危険です。普段から汚くしている人(失礼,あまり構わない人)の方が,抗菌力が大です。

悪臭
汚水ですから臭いです。臭いをなくすように施設に投資したり,運転管理を行っています。しかし,多少臭いですので,見学後,臭いが気になるなら洗濯をしましょう。汚れていたら感染のおそれもありますので早めに洗濯を。臭いも,感ずるところの個人差がありますので,単に臭いと言っても判断が難しいでしょう。

騒音
汚水を浄化するためには,いろいろな機械が必要ですので,機械から音が出ます。作業者は慣れていますが,そうでない方はうるさく感じます。音を一度覚えてしまうと,その音に対してとても敏感になりますので,個人差が多いのが騒音でしょう。


ここでちょっと勉強。

危険な物質について(法令上の取り扱い)

危険な物質

発火性物質
強酸化性物質(消防法第1類)
    加熱,衝撃で分解し,O2を出し可燃物と激しく燃焼し,時には爆発する。塩素酸塩類,過酸化物など。
強酸性物質(消防法第6類)
    有機物や還元制物質に混合すると発熱し,時には発火する。鉱酸類。クロロスルホン酸など。
低温着火性物質(消防法第2類)
    比較的低温で着火し,燃焼速度が速い可燃物。黄燐,金属分など。
自然発火性物質・禁水性物質(消防法第3類)
    室温で空気に触れると着火し,燃焼する物質。有機金属化合物,金属触媒など。
    水と反応して発火し,時には生成ガスによる爆発を起こす物。金属ナトリウム,カーバイドほか。

引火性物質(消防法第4類)
ガソリン,灯油,重油など

爆発性物質
分解爆発性物質(消防法第5類)
    熱または衝撃によって着火,爆発する可燃物。硝酸エステル,ニトロ化合物ほか。
火薬類(火薬類取締法)
    爆発させることを目的として作られた物。火薬,爆薬,加工品。
可燃性ガス(高圧ガス取締法)
    爆発限界濃度の限界が10%以下,または上下限の差が20%以上のガス。水素,アセチレンほか。
プロパン,メタン,アンモニア,硫化水素など

有害性物質
毒性ガス(高圧ガス取締法)
    許容濃度が200mg/m3以下のガス。ホスゲン,シアン化水素ほか。
    オゾン,塩素,塩化水素,硫化水素など
毒物(毒物及び劇物取締法)
    経口致死量が体重1kgにつき30mg以下の物。シアン化カリウム,シアン化ナトリウム,水銀,ひ酸,パラチオンなど
劇物(毒物及び劇物取締法)
    経口致死量が体重1kgにつき30〜300mgの物。硝酸,アニリン。
    水酸化ナトリウム,クレゾール,メタノールなど

このほかに,大気汚染防止法,水質汚濁防止法,下水道法などなどいろいろな法律での区分があるが省略する。
法令に基づき,国家試験資格で取扱ができるようになり,取扱者に課される責任は重い。試験は,たぶんそんなに難しくはない。業務として取扱ができるように最低限の知識を求めている。引っかけ問題が多いので注意が必要。(私も危険物甲(消防法)と毒劇しか持っていないので,全部は分からない。)
人を傷つける目的ではなく,自分たちを守る目的で危険な物質について知識を得ることは必要なことです。昔は,毒蛇や毒キノコの知識が生きる上で必要でしたが,いまは毒物のことや環境ホルモンなどについての知識が必要になってきているのです。便利で快適でも,危険な世の中・・・。


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