<古代・中世> 温泉は自然から人間への贈り物。人々は,温泉の神秘的効能を神の加護と考え, 本地仏として薬師如来を祀っている。草津温泉や伊香保温泉は,室町時代から既に有名となり 湯治場として湯宿が成立している。 |
<近世> 一般の人たちの湯治は世の中の落ち着いた江戸時代から盛んになる。特に江戸後期(文化文政時代)になり,草津温泉の湯治客が増加すると,吾妻の温泉が賑わいをみせるようになる。この頃の湯治は, 浴場を囲んで湯宿があった。草津は酸性泉で殺菌力が強く,刀傷や皮膚病等に優れた効能があった。 伊香保は子宝の湯と知られる。 四万は胃腸病に,沢渡・大塚は皮膚疾患に効能があった。 病によって湯治の仕方が少しづつ異なったが,療養を主体とする長期滞在型の温泉利用がされていた。 |
<近代> 戦乱や世情不安によって湯治客の増減があった。幕末から明治初期にかけて浴客数が激減し,温泉地がさびれてしまった。 しかし,ドイツ人のベルツ博士(1849-1913)によって,温泉療養の効果について人々に知られた。産業・交通の発達により再び温泉湯治が盛んになった。さらに第一次対戦による好況により,浴客数が戦前にピークを迎えた。 |
<現代> 第二次大戦中は,温泉地に疎開児童を受け入れたことがあって浴客数が減少した。終戦後,混乱が落ち着くにつれて,温泉ブームが起こった。昭和30年代後半から高度経済成長期にかけ,保養型温泉から観光地型の温泉へと変化を遂げていった。その結果,ビルが立ち並び,昔の湯治場としての面影が失われていった。 近年,新しい温泉が掘られ,日帰り型の温泉が目立ち始めた。 今,四万温泉などの保養型温泉は,湯治場としての温泉の姿を残して生き残りをかけている。 |